外国人材の受け入れをめぐって、「育成就労制度とはどのような制度なのか」と気になっている方も多いのではないでしょうか。すでに動いている「技能実習制度」や「特定技能制度」との違いも、制度名だけでは分かりにくいところです。この記事では、育成就労制度とは何かを、技能実習・特定技能との違いを中心に整理して解説します。
※本記事は、出入国在留管理庁・厚生労働省「育成就労制度運用要領」(令和8年8月版)等の公式情報に基づく一般的な解説です。個別の許可・認定の可否については、外国人技能実習機構(制度施行後は外国人育成就労機構)または専門家にご確認ください。
育成就労制度とは
育成就労制度とは、人材の確保が難しい産業分野(育成就労産業分野)において、外国人に日本での就労を通じて技能を身につけてもらいながら、あわせてその分野の人材も確保することを目的とした、外国人受け入れの制度です。 令和9年(2027年)4月1日から、育成就労外国人の受け入れが始まります。
具体的には、外国人が日本で3年間の育成就労を行うことを通じて、「特定技能1号」水準の技能を身につけることが目標とされています。この制度は、これまで運用されてきた「技能実習制度」を廃止し、その役割を引き継ぐ形で新しく創設されました。技能実習制度と名称は似ていますが、次に説明するとおり、制度の目的や転籍の仕組みには重要な違いがあります。
運用の根拠となる法律は「外国人の育成就労の適正な実施及び育成就労外国人の保護に関する法律」(育成就労法)で、この法律に基づいて、国が「育成就労制度運用要領」という詳細な運用ルールを定めています。
育成就労制度と技能実習・特定技能の違い
育成就労制度と技能実習制度の主な違いは、制度の目的と転籍の仕組みです。技能実習制度が技能移転を通じた国際貢献を目的としているのに対し、育成就労制度は日本の人手不足分野における「人材育成」と「人材確保」を目的としています。また、技能実習制度では転籍が「やむを得ない事情がある場合」(暴力・ハラスメントなど)に限られていたのに対し、育成就労制度では、これに加えて一定の条件を満たせば外国人本人の意向による転籍も認められるようになりました(転籍制限期間1〜2年、転籍先が優良な実施者であることなどの要件があります)。
一方、特定技能1号は一定の技能を持つ即戦力人材を受け入れる制度で、育成就労は3年間の就労を通じてその特定技能1号水準まで人材を育て上げる制度、という違いがあります。3つの制度を同じ軸で比較すると、次のとおりです。
| 項目 | 技能実習制度 | 特定技能制度(1号) | 育成就労制度 |
|---|---|---|---|
| 目的 | 技能移転による国際貢献 | 人手不足への対応(即戦力人材の受け入れ) | 人材育成と人材確保 |
| 転籍・転職 | 原則不可(やむを得ない事情がある場合のみ) | 一定の条件下で転職可能 | やむを得ない事情による転籍に加え、本人意向による転籍も一定の条件下で可能 |
| 育成就労との関係 | 育成就労制度に発展的に解消 | 育成就労修了後の移行先の一つ | 技能実習制度の後継。3年間で特定技能1号水準を目指す |
なお、育成就労を修了した外国人がそのまま自動的に特定技能1号へ移行できるわけではありません。移行には、技能検定試験3級等の技能試験、および日本語能力A2相当以上の日本語試験への合格が要件となります。これは、技能実習2号を良好に修了した場合に試験が免除される現行のしくみとは異なる点です。
育成就労制度が作られた背景
育成就労制度が作られた背景には、技能実習制度の「国際貢献」という目的と、人手不足を補う労働力としての実態とのずれや、人権保護上の課題があります。あわせて、人手不足への対応を目的とする特定技能制度との関係を整理し、両制度の連続性を高める必要もありました。
技能実習制度の課題
技能実習制度では、国際貢献を制度目的としてきた一方、実際には人手不足を補う労働力として受け入れられている側面が強くなっていました。技能実習制度は、「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」に基づき、開発途上国などへの技能移転による国際貢献を目的として運用されてきましたが、この建前と実態のずれが指摘されてきました。また、転籍が原則として難しいことによる失踪の発生など、外国人の労働環境・権利保護の面でも課題が指摘されていました。
特定技能制度との併存
育成就労制度が創設される前は、国際貢献を目的とする技能実習制度と、人手不足への対応を目的とする特定技能制度という、目的の異なる2つの制度が併存していました。特定技能制度は、日本の人手不足に対応するため平成31年(2019年)に運用が始まった制度で、人材確保が困難な特定の産業分野において、一定の技能・日本語能力を持つ外国人を受け入れるものです。目的の異なる2つの制度が並存する状態が、制度の分かりにくさにつながっていました。
育成就労制度の創設に至る経緯
こうした状況を踏まえ、令和6年(2024年)6月21日に、技能実習制度を見直す改正法が公布されました。この改正により、従来の技能実習法は「外国人の育成就労の適正な実施及び育成就労外国人の保護に関する法律」(育成就労法)に改められ、令和9年4月1日から育成就労制度としての運用が始まることになりました。
育成就労の対象となる分野
育成就労外国人が実際に就労できるのは、省令で定められた「育成就労産業分野」に限られます。運用要領(令和8年8月版)の時点では、次の17分野が対象とされています。
- 介護
- ビルクリーニング
- リネンサプライ
- 工業製品製造業
- 建設
- 造船・舶用工業
- 自動車整備
- 宿泊
- 鉄道
- 物流倉庫
- 農業
- 漁業
- 飲食料品製造業
- 外食業
- 林業
- 木材産業
- 資源循環
このうち工業製品製造業は、機械金属加工や縫製、印刷・製本など17種類の業務区分を含む、最も対象範囲の広い分野です。反対に、介護や宿泊、外食業のように、分野の中の業務区分が1つだけというものもあります。
なお、育成就労産業分野は省令で定められているため、今後の改正によって分野や業務区分が追加・見直しされる可能性があります。実際に外国人の受け入れを検討する際は、必ず最新の公式情報を確認してください。
育成就労の2つの実施形態
育成就労には、大きく分けて2つの実施形態があります。
- 単独型育成就労:海外に自社の事業所(本店・支店や親子会社など)を持つ企業が、その事業所の職員を日本に受け入れて、自社で育成就労を行わせる形態です。監理支援機関を介さずに実施します。
- 監理型育成就労:「監理支援機関」と呼ばれる非営利法人が、育成就労実施者(外国人を受け入れる企業など)を指導・監督しながら、育成就労を行わせる形態です。技能実習制度における「団体監理型」に近い仕組みです。
このほか、季節性のある農業分野と漁業分野では、一定の要件を満たすことで、労働者派遣の形態による育成就労も認められています。
育成就労制度を運用する機関と3つの手続き
育成就労制度では、「外国人育成就労機構」が育成就労計画の認定や各種届出の受理、監理支援機関の許可申請に関する手続き、指導監督などを担います。この組織は、現在の「外国人技能実習機構」が、育成就労制度の施行にあわせて令和9年4月に改称される予定のものです。主な手続きは、育成就労計画の「認定」、育成就労実施者の「届出」、監理支援機関の「許可」の3つです。なお、監理支援機関の許可そのものは主務大臣が行い、機構は許可申請の受理や事前の事実関係調査などを担う位置づけです。
- 育成就労を行わせる企業などは、外国人ごとに「育成就労計画」を作成し、事前に機構の認定を受ける必要があります(認定制)。
- 育成就労実施者は、初めて育成就労を行わせたときに機構へ届出を行う必要があります(届出制)。
- 監理型育成就労を支える監理支援機関は、主務大臣による許可を受ける必要があります(許可制)。機構は、その許可申請の受理窓口となります。
この「認定制」「届出制」「許可制」という3つの仕組みは、対象も手続きの重さも異なるため、混同しないよう注意が必要です。機構は、このほか次のような業務も行います。
- 育成就労実施者・監理支援機関に対する指導監督
- 育成就労外国人からの相談・申告への対応
なお、制度の施行前であっても、育成就労計画の認定申請(施行日前申請)は、現在の「外国人技能実習機構」が受け付けています。
育成就労外国人を保護する仕組み
育成就労法には、外国人の人権を保護するための禁止規定も設けられています。具体的には、暴力・脅迫・監禁などによる育成就労の強制、契約不履行についての違約金の設定、旅券(パスポート)や在留カードの保管が禁止されています。
これらの規定に違反する行為があった場合、外国人は出入国在留管理庁長官・厚生労働大臣にその事実を通報・申告することができ、機構による相談対応や、状況によっては転籍の支援を受けられる体制も整えられています。
育成就労制度はいつから始まる?
育成就労制度は、令和9年(2027年)4月1日から施行されます。ただし、技能実習制度には経過措置があり、施行日の時点ですでに来日して技能実習を行っている方は、そのまま技能実習を継続できます。また、改正法の経過措置により、施行日前にされた技能実習計画の認定申請のうち、技能実習の期間の始期が施行日から起算して3か月を経過する日まで(令和9年4月1日施行の場合、目安として同年6月30日まで)のものについては、施行後もなお従前の技能実習法のルールに基づいて技能実習を行うことができます。施行スケジュールや経過措置のより詳しい内容については、別記事で改めて解説します。
まとめ
育成就労制度は、令和9年4月1日から始まる、技能実習制度に代わる新しい外国人受け入れ制度です。技能実習制度が「国際貢献」を目的としていたのに対し、育成就労制度は「人材育成」と「人材確保」を目的とし、本人意向による転籍が新たに認められるなど、転籍の仕組みにも違いがあります。単独型・監理型という2つの実施形態があり、対象となる17分野の中から業務を選ぶ必要があります。実務は外国人育成就労機構(施行前は外国人技能実習機構)が担い、「認定制」「届出制」「許可制」という3つの手続きが用意されています。
制度の全体像を押さえたら、次は自社や自分の立場(受け入れ企業、監理支援機関など)に応じて、具体的な手続きや基準を確認していくことをおすすめします。
出典:出入国在留管理庁・厚生労働省「育成就労制度運用要領」(令和8年8月版)、出入国在留管理庁「育成就労制度に関するQ&A」、外国人技能実習機構ウェブサイト
免責事項:本記事は上記の公式情報に基づく一般的な解説であり、特定の企業・個人のケースに対する法的助言ではありません。制度は今後改正される可能性があります。個別の認定・許可の可否や最新の制度内容については、外国人育成就労機構(施行前は外国人技能実習機構)または行政書士等の専門家にご確認ください。
